平成27年12月以降、一定規模以上の事業場で「ストレスチェック制度の実施」が義務付けられました。

本記事では、義務化された「ストレスチェックへの対応方法と罰則規定」について解説していきます。

 

【目次】

ストレスチェック制度とは?「義務化と目的」

Point1.実施義務は「労働者が常時50名以上の全事業場」

Point2.「契約期間1年未満・労働時間が3/4未満」の労働者は対象外

Point3.実施者は「医師・保健師・精神保健福祉士」などの有資格者

ストレスチェック制度に関連する罰則一覧

1.「ストレスチェック未実施・未報告」罰金は最大50万円

2.「守秘義務違反」最大6か月の懲役又は罰金50万円

3.「個人情報保護法違反」最大1年の懲役又は罰金100万円

4.「不利益取扱の禁止」罰則なし

5.「安全配慮義務違反」民法による罰則の可能性

ストレスチェックの準備・実施・報告の手順

1.「ストレスチェックの実施前準備と従業員への通知」

2.「ストレスチェック実施と質問票の配布・回収」

3.「高ストレス者の判定、医師による面接指導の希望有無を確認」

4.「面接指導の実施と就業上の措置」

5.「集計結果を基に報告書を作成、労働基準監督署へ提出」

ストレスチェックの外部委託と助成金

まとめ:ストレスチェックは義務、助成金で外部委託も簡単に

 

 

 

ストレスチェック制度とは?「義務化と目的」

 

※厚生労働省「労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)の概要 」より画像引用

 

【ストレスチェック制度の概要】

目的 精神的なストレス不調を未然に防ぎ職場環境の改善を促す
実施義務 常時50名以上の労働者がいる全事業所
対象者 継続雇用している労働者が対象

(※常時使用する労働者)

頻度 年一回
実施者 医師(産業医)・保健師・精神保健福祉士
実施事務従事者 実施企業の人事権に関与しない人物
委託 外部機関への委託可能
報告 調査書を労働基準監督署へ提出
その他 調査データの保管は5年間

 

ストレスチェック実施の義務化は、精神障害に関する労災認定件数が「3年連続で過去最高を更新している」ことを背景に、労働安全衛生法の一部を改正する法律として、平成26年より公布、平成27年12月から義務化されることになりました。

 

目的はメンタルヘルスの不調を未然防ぐことであり、職場環境の改善を促すためです。

年に一回、規定の実施者によって行われ、人事権に関与しない人物のみ実施事務に従事できます。

 

高ストレスと判断された労働者は、希望に応じて医師(産業医)による面接指導を受けられます。

 

また、実施後は調査書を速やかに労働基準監督署へ報告し、実施データを5年間保管しておくことが義務付けられています。

それでは、具体的なストレスチェック義務化のポイントを見ていきましょう。

 

 

 

Point1.実施義務は「労働者が常時50名以上の全事業場」

 

ストレスチェック制度の実施が義務付けられているのは、「常時50名以上の労働者がいる全事業場」です。

 

常時50名以上とは、勤務日数に関わらず「継続雇用されている労働者の総数」であり、アルバイト・正社員・契約社員が対象となります。

※社長・取締役等の会社役員は、経営者になるため労働者の数には含みません。

 

50名未満の事業場に関しては「協力義務」に留められていますが、将来的に義務化される可能性があります。

 

本社等の別の事業場が実施義務の要件を満たしているのであれば、ストレスチェックが一斉に行える環境を、事前に整えておいた方が良いでしょう。

 

 

 

Point2.「契約期間1年未満・労働時間が3/4未満」の労働者は対象外

 

ストレスチェックが義務付けられている事業場の中でも、「契約期間1年未満」「労働時間が所定の3/4未満」の労働者は実施対象外として扱われます。

 

該当者のみ対象外であり、その他職員には実施が義務付けられていますので注意が必要です。

 

また、実施日前に契約更新を行うと実施対象者に含まれてしまう点も留意しておきましょう。

 

 

 

Point3.実施者は「医師・保健師・精神保健福祉士」などの有資格者

 

ストレスチェックの実施者は「医師(産業医)・保健師・精神保健福祉士」の資格を有する者に限られています。

(※この他、歯科医師・看護師・公認心理士の資格保有者も実施者として認められる)

 

健康上の個人情報を取り扱うため、労働者の不利益を避けるべく、人事権に関与する職員は一切関わることを許されません。

 

実施事務従事者として、実施者の補佐(調査書類の回収・付随する事務作業)が行えるのも、企業の人事権に一切関与しない人物に限られています。

 

また、実施後に高ストレス者と判断され、事業者に申し出た希望者は「医師(産業医)による就業上の措置※を含む面接指導」を受けられます。

(※就業上の措置とは、休職・残業禁止・短時間勤務・配置転換などを含みます)

 

 

 

ストレスチェック制度に関連する罰則一覧

 

ストレスチェックの義務化に関する「労働安全衛生法の第120条項」により、労働基準監督署に未報告の者へ罰金を課すことが定められています。

 

この他にも、ストレスチェック未実施による罰則だけなく、その他法令違反に抵触するケースをご紹介します。

 

【制度に関連する違反行為】

1.ストレスチェックの未報告

2.守秘義務違反

3.個人情報保護法

4.不利益取扱の禁止

5.安全配慮義務違反

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

 

 

1.「ストレスチェック未実施・未報告」罰金は最大50万円

 

「労働安全衛生法の第120条項」により、労働基準監督署へ未報告の者には罰則として反則金を課すことができます。

 

次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

五  第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

 

※引用元:中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター「労働安全衛生法 第十二章 罰則」

 

また、報告に使う調査書は「労働基準監督署の立ち入り調査」に際して提出を求められる事が多く、法令違反として是正勧告を受けないためにも、適切に対処することが重要です。

 

 

 

2.「守秘義務違反」最大6か月の懲役又は罰金50万円

 

「健康診断・面接指導・検査」の事務に従事した者は、労働安全基準法「第百四条」による守秘義務があるため、他人に秘密を漏らしてはいけません。

 

こちらは罰金だけでなく、6か月以下の懲役刑になる可能性もあります。

 

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円

以下の罰金に処する。

 

第百四条 第六十五条の二第一項及び第六十六条第一項から第四項までの規定

による健康診断並びに第六十六条の八第一項の規定による面接指導、第六十六

条の十第一項の規定による検査又は同条第三項の規定による面接指導の実施

の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしては

ならない。

 

※引用元:中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター「労働安全衛生規則 第四編 特別規制 第一章 特定元方事業者等に関する特別規制」

 

その他、実施者に関する守秘義務関連の法律については、「厚生労働省の審議会書」にまとめられているため、気になる方はご覧ください。

 

 

 

3.「個人情報保護法違反」最大1年の懲役又は罰金100万円

 

ストレスチェックに関するデータは個人情報に該当するため、厳重管理する必要があります。

 

これまでは、「個人情報の取扱事業者のみ」が法令の対象となっていました。

しかし、平成29年より法律が改正され「個人情報をデータベース化して事業に利用している事業者」全てが法律の適用対象へ変更。

 

ストレスチェック制度は実施データを5年間保管する義務があるため、実質的な個人情報のデータベース化に該当する可能性があります。

 

個人情報の定義

 

第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

 

一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(中略)特定の個人を識別することができるもの(後略)

二 個人識別符号が含まれるもの

※出典元:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」

個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律

 

委員会による命令違反・委員会に対する虚偽報告等の法定刑を引き上げる。

(※)命令違反:6月以下の懲役又は30万円以下の罰金

→ 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

※引用元:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」

 

この他にも、民事訴訟に発展するケースもあるため、個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。

 

 

 

4.「不利益取扱の禁止」罰則なし

 

診断結果や就業上の措置を理由に、「従業員に対して不利益な措置※」を行うことは各法令によって禁止されています。

(※人事上の不利益な評価・給与面の不利益な算定・就業環境を害することなど)

 

法律上明示的に禁止されている不利益取扱い

 

法の規定による禁止されている不利益な取り扱い
第 66 条の 10 第3項の規定により、事業者は、労働者が面接指導の申出をしたことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない(後略)

※出典元:厚生労働省 労働基準局安全衛生部「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」

 

ただし、この次項に関する罰則規定はありません。

 

 

 

5.「安全配慮義務違反」民法による罰則の可能性

 

すべての雇用主は、労働者が命や身体が守られた状態で働くことができるように配慮する義務を負っています。

 

そのため、ストレスチェック制度の実施は「安全義務」として必要な配慮にあたる可能性が高く、未実施は法令違反に該当する場合があります。

 

労働契約法 労働者の安全への配慮

 

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

※引用元:「e-gov法令検索 平成十九年法律第百二十八号労働契約法」

 

安全配慮義務違反に罰則の記載はありませんが、民法上の「債務不履行(民法415条)不法行為(民法709条)使用者責任(民法715条)」に該当し罰則が課されることもあります。

 

 

 

ストレスチェックの準備・実施・報告の手順

※厚生労働省「ストレスチェック制度 導入マニュアル」より画像引用

 

ここからは、実際にストレスチェックを行う手順をご紹介します。

 

本項の画像は厚生労働省の「ストレスチェック制度 導入マニュアル」より引用しています。

 

ストレスチェックは「導入前準備」「ストレスチェック(全員)」「面接指導(高ストレス者)」によって一連の制度が構成されています。

 

本項では、一連の流れを簡易説明しています。

 

 

 

1.「ストレスチェックの実施前準備と従業員への通知」

 

【導入前の実施策定】

会社として方針・実施方法を社内規定として定めます。

決まり次第、アルバイト・パートを含む「全労働者」に社内規定とストレスチェック実施を通達しましょう。

 

 

【実施体制・役割の決定】

ストレスチェックの実施に向けて、担当者や体制を定めていきましょう。

※役割の兼務は可能

 

 

 

 

2.「ストレスチェック実施と質問票の配布・回収」

 

【質問票の配布と記入】

 

対象者に質問票を配布し、記入を依頼します。

 

※オンラインで実施することも可能です。

※質問票は「国が推奨する57項目の質問票」又は下記3種類の質問を含んでいるものを使用します。

 

  1. ストレス原因に関する質問項目
  2. ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
  3. 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

 

【質問票の回収】

記入後の質問票は、実施者又は実施事務従事者が回収します。

 

※実施者・実施事務従事者以外が記入後の質問票を閲覧してはいけません。

 

 

 

3.「高ストレス者の判定、医師による面接指導の希望有無を確認」

 

【ストレス程度の判定】

実施者が質問票を基にストレス程度を評価し、「高ストレス」で医師(産業医)の面接指導が必要な者を選びます。

 

※具体的な判断基準は「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度実施マニュアル」の40pをご覧ください。

 

【結果の通知と保管】

 

実施者から直接本人に結果通知が行われます。

※企業側が結果を入手するには、本人の同意が必要です。

 

結果は実施者又は実施事務従事者が「5年間保存する」ことを義務付けられています。

「機微な個人情報」に該当するため、第三者が容易に閲覧できないように保管しましょう。

 

 

 

4.「面接指導の実施と就業上の措置」

 

医師が作成する報告書・意見書の様式(例)

 

【面接指導の実施】

「高ストレス」と判定された労働者から申出があった場合、医師の面接指導を実施します。

※申出は結果通知より1カ月以内、面接指導も申出から1カ月以内に行う

 

【医師からの意見聴取と就業措置の検討】

面接指導後1カ月以内に、医師からの意見聴取を行います。

 

面接指導を行った医師から「就業上の措置の必要性」と「措置内容」の意見を聴き、必要な措置を実施します。

 

※報告書・意見の書の詳細例は「医師が作成する報告書・意見書の様式(例)」で閲覧可能です。

 

【面接指導結果の保存】

面接指導の結果は、事業所で5年間保管しましょう。

記録については下記5つの必要項目で作成し、保存します。

 

 

 

5.「集計結果を基に報告書を作成、労働基準監督署へ提出」

 

検査結果報告書

 

 

【報告書の作成と提出】

実施者又は実施事務従事者が結果を集計し、労働基準監督署に提出する「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を作成して提出します。

 

提出期限は「前回の報告書提出から1年以内」と決められていますので、実施後は早めに提出しておきましょう。

 

また、提出先は「各事業所の所轄の労働基準監督署」になります。一つの事業所からまとめて提出することはできません。

 

報告書の印刷ページ

 

報告書のオンライン作成サービス(厚生労働省)

 

 

 

ストレスチェックの外部委託と助成金

 

ストレスチェック制度が義務化されて、企業側の負担が増える一方、企業の負担軽減・実施促進施策として、国による「ストレスチェック実施促進のための助成金」がスタートしています。

 

「ストレスチェック実施促進のための助成金」を利用することで、ストレスチェックの実施コストも1名につき500円まで助成されます。

 

また、医師の活動についても21,500円を上限とし、3回まで援助されるため、費用が嵩む面談指導の負担も軽減できます。

 

 

「外部委託サービス」に助成金を利用可能できるため、ストレスチェックの実施からレポート作成までの外注も選択肢に入ってきます。

 

弊社のストレスチェックサービス「Wity(ウィティ)」は1名あたり年間500円で利用可能、助成金を活用すれば費用を掛けずに実施することができます。

 

ストレスチェックだけでなく、専門家とのチャット相談サービスや各種コラム・自己啓発コンテンツの配信等、労働者の福利厚生も支援しています。

 

離職・休職・労災リスク低下の一環として、検討してみてはいかがでしょうか。

 

詳細はこちらのページをご覧ください。

 

 

 

まとめ:ストレスチェックは義務、助成金で外部委託も簡単に

 

ここまでストレスチェックの手順や罰則に関して解説させて頂きました。

 

将来的には労働者50名未満の事業所も義務化される可能性があるため、早い段階から体制を整え、実施できるように準備しておきましょう。

 

アプリや専用サービスを活用し、人的リソースを割かずにストレスチェックを実施可能です。

 

委託費用についても、一人当たり500円までは国からの助成金制度、「ストレスチェック実施促進のための助成金」を利用することで負担を軽減できます。

 

外部機関に委託するなら、助成金範囲内で利用可能・ストレスチェック以外にもコンテンツを発信している「Wity(ウィティ)」をぜひご利用ください。

 

詳細は、こちらのページから!